2013年6月29日土曜日

プロデュースというお仕事(西武渋谷店L.E.誕生秘話) その3

そんなわけで、

「意味」より「意義」

その目線でコンテンツを考えた。

表参道のスパイラル・カフェに陣取って、

ノートにまとめる。

うむ。これなら、多少は聞く耳を持ってくれるかもしれない。





インテリアショップのオーナーに
西武渋谷店出店をお願いするいくつかの切り口]

その1

「西武は日本の文化を作ってきた。その恩恵を受けて育ってきた僕らだからそ、今度は担い手側に立って、日本の文化の発展に寄与するべきではないだろうか?」

■ 補足

80年代中〜後半を憶えている人は多いだろうけど、

あの頃の百貨店は輝いていたよね。

僕は神奈川育ちだから、東京=渋谷だった。

「日曜日、東京いこうぜ」

って言ったら、それは渋谷に遊びに行こうぜということだったのだ。

パルコって何語?」

「いやそれはいいけど、1、2、3ってきて、なんでクアトロなんだ?」

「うーむ・・わからん。しかし・・かっこいいな」

とか

「ロフト?何それ?」

「藤沢のハンズに似たやつ

「へー」

「と言う事は、その一見シンプルだけど何やらおしゃれな手帳は・・そのロフトで買ったのか?」

「いや、これは無印で買った」

「無印?」

「あとお菓子とか自転車とか売ってた」

「???何屋だそれ?

「それより、来週のスキーだけど苗場でいいよね」

「プリンス?」

「だから週末西武付き合ってよ・・」

・・・あの頃確かに、西武系列は渋谷の中心で日本の文化の最先端を作っていた。

キラキラとした街の活気。

クリスマス時期ともなれば、渋谷っていう街自体が、まるで宝石箱と化して僕らの前に広がった。

その恩恵を今度は文化貢献の担い手側に立って返すのだ。

恩返しですって!!

この切り口に大抵のオーナーさんたちは、

ほーん」と言った。

「ふーん」と「へー」と「あっそー」の中間語だ。

だめか・・。

失敗。

(つづく)





































2013年6月27日木曜日

プロデュースというお仕事(リビング・エディション誕生秘話)その2


新店舗を出す。

結構なことじゃんね。

お店が増えて、売り上げ上がって、

わーい!!

って思うよね。

でも、実際はそんな簡単なことじゃ
ない。

僕らお店をやっている人間はこう考えます。

一ヶ月に〜〜万円売れたとして、

粗利益が〜〜万円(☜伏せますね、一応)

そこから人件費、家賃、広告費、あとあれもこれも全部引いて…。

残りが〜〜か。

うーん、やる価値あるかなー。

とか、

残らないじゃん!

とか。

(丸儲けじゃん…ってのは正直に言って、ほとんどないです)

アパレルもインテリアもその辺は似ていると思うな。

今回の場合。インテリアショップのみなさんをご誘致するにあたって、分かり易かったのは、僕自身がインテリアショップのオーナーなので、利益想定が同じ目線でできる立場にいたという点でした。

結論としては、

出店する意味は、

悲観的に見てトントン。

楽観的に見て出店すべき。

うーん。

ルーキーSHOPならいざ知らず。誘おうとしているのは、僕の会社より格上の先輩のブランドばかり。明らかにトントンのフェーズに乗ってくれるのかな?や、無理だろうな 。西武側もこれ以上条件的に譲歩はできないだろうし…。

迷っている内に時間が過ぎて行きました。


某月某日
中目黒のとあるお寿司屋さん。

1人カウンターで飲んでいると、
「暗い顔だねー」
そこの女将さんに声をかけられた。
「どうした?」

春真っ盛り。目黒川は満開の桜。それを見物にやって来るお客さんでごった返していた。

「百貨店への出店を迷ってるんだ」

プロデュース云々って言うと話が長くなりそうだったから、そんな風に答えた。

大体1人で飲んでいる時は人に声をかけてもらいたくないタイプだから、この時もなんで答えたかが自分自身不思議だった。

女将さんの目がキラーンと光った。

いつもウンともスンとも云わない常連客がなにがしかを答えたのだ。しかも心の迷い的なことを!

「意味があるかないかってこと?」

「まあ、そんなとこ」

「お酒一合!常温で!豪快ね!(お酒の名前)」

大きな声で(僕のオーダーを勝手に)カウンターに注文しながら、当人にはヒソヒソ声で、

「意味より意義よぅー」

と言ってパタパタ去って行った。

!!!

バチーン!

って来た。

意義…だと…??

僕らインテリアショップは傾向として言えば、儲けるためにを100%にして仕事をしていない。多くのオーナーは、自分たちが存在する意義を(家具を通して)世の中に問いかけるという意識でお店を経営してるのだ。

意味なんていいじゃん。

意義があるかないかだろう?

それなら、

先輩オーナーたちに電話できるぞ。

そう思った。

(あ、ちなみに、中目黒のお寿司屋さんの名前は「いろは寿司」です)

つづく。






2013年6月25日火曜日

プロデュースというお仕事「リビング・エディション」誕生秘話(ってほどのことでもないけど) その1




西武渋谷店地下一階「LIVING EDITION」がスタートした。

今を時めく有名インテリアショップが渋谷西武に軒を連ねた、

日本インテリアの最先端ブースだ。





「ご当地駅弁フェアって百貨店さんは得意じゃないですか、

あれのインテリア版をやりましょうよ」

1年半前。渋谷店店長にそんな戯れ言を言ったのが事の始まりだった。

高橋店長は優しい方なので、「そうですねー」とか言ってくれはしたが、

内心ではどう思っていたかは知らない。きっと「は?」

って感じだったんだと思う(というか、後日談でそう言っていた)。

それでも店長はその突飛な案を憶えていてくれて、

「野田さん、例のアレ、やりましょうよ」

ってお声がけしていただいたのが、半年前だ。

最初の話から1年以上が経っていた。



某月某日
at  西武渋谷作戦会議室

「家具屋さんは全国各地にありますけど、基本的にメーカーさんの

仕入れものを売っているだけなので、ご当地駅弁フェアって感じにはなりません」

つまり、商品がかぶるわけです。フランスベッドとかカリモクとか。

ですから、ここはインテリアショップでまとめましょう」

初めてのプレゼンで鼻を膨らませながら、そう言ってみた。

「でも、日本全国の家具が集結っていうダイナミズムはなくなりますね」

確かに・・うーん。

迷った末に苦肉の提案。

「なら、MD変更です」

渋谷店の会議室。関係者一同、ざわり。

「ラーメン博物館にしましょう」

「ラーメン博物館・・ですか?」

「はい。」

「ラーメンって・・(苦笑)」

誰かがパタリと手帳を閉じた。

やばい。

「ゼロファーストデザイン、WISE・WISE、パシフィックファニチャーサービス、タイムアンドスタイル、ブランチ、エリア、ポリス、シボネ、カーフ。この辺りを集めます」

「ほう」

身を乗り出したのは、バイヤーのお偉いさんだ。

「ラー博は、その場に行けば、有名ラーメン店の味が手軽に楽しめます。

それのインテリア版です」

今言った辺りのカリスマ☆インテリアショップを集めれば、

一般の方はもちろん、プロのコーディネーターも垂涎の売り場になるだろう。

「インテリアショップガイドっていう雑誌があります。」

「インテリアショップを集めたガイドブックですね?」

「そうです。ラー博っていう表現がダメなら、

ショップガイドのリアル版フロアを作るという切り口ではいかがでしょう」

「ふーむ」

誰かが言った。

「ABCはどうしますか?」

アルフレックス、B&B、カッシーナのことだ。

「入れません」

ざわざわ・・。

「百貨店は長く、ABCに頼り過ぎです。マーケットはウンザリしています。

それとは別のコンテンツも、もうそろそろ持つべきではないでしょうか。

先ほど挙げたショップたちの多くは全国区と呼ぶには

確かにまだ無名の、言わばストリート系です。

でも、ある意味で言えば、既得権益を持たずに、

マーケットを味方にして有名になった。

アパレルで言うと出発期のビームスや

アローズ、ベイクルーズなどに似ている。

こういうルーキーを発掘して全国区に押し上げて、

未来の文化を作って行く。これが西武イズムなのでは

ないでしょうか」

アケリ。

さっきの人が手帳を開いた。

「一言で言えば西武渋谷店による、インテリアブランドの新規開拓です」

いいんじゃないか?

うむうむ。

肯定的な空気が流れ出した。






でも、実は僕は・・・。

それを言ってから激しく後悔をしていた。

なぜか?

唯我独尊&群れない権化のカリスマ社長のみなさんが、

易々&ホイホイ協力してくれるわけないじゃないかー。

そんな光景・・「全然×100」くらい想像が出来なかったからだ。


つづく
















2013年6月23日日曜日

AREA(エリア)のお仕事


6年前に製作したAREAオリジナルスタンド。

最初は普通のフロアスタンドを考えていたのですが、

AREAの空間にふさわしいスタンドってなんだろう?

インパクト&高級感かな?

と考えているうちに、鉛筆デッサンの段階で、

だんだん巨大化した記憶があります。

職人には、

「お前、ホントにこんなの作るんかい?

とか言われたり。

はは・・。笑える。

SHOPに届いた時は、

高級イタリアンのエントランス

とかにありそうなのが出来てしまったぞ ?

とか思っていました。

でも、これがホームユースとして普通に誰かの部屋にある。

そう考えただけでワクワクしたものです。

実際、ハマるひと(職種的には金融マン、商社マン、広告マンなどの

旦那樣方たち)は買って行って下さいますし、

現在、商業空間でも活躍してくれています。





  








  

  ■ ウォールナット無垢材
  ■ 叩きのブラックアイアン。
  ■ 本革黒仕様
  ■ 800mm角 H1800mm
  ■ ¥680.000。
  ■ D:  Go. Noda

以上が簡単なスペック。

・・・・いろんな意味で重いです。

でも、普通の家具は他所にありますしね。

最高級の素材を日本の職人が手で作る

オーバースペック&ハイエンド !!

そう言う意味では、

・・・果てしなくカッコいいです
















2013年6月21日金曜日

間違いだらけと分かってても僕らは進んでいく。つまりそれは、怖れずに幸せになる切符を手にしている。



夏の手前。

窓を開けると遠くからピアノの音。

たどたどしい音色。

静かな朝6時。

雨が降っている。

水の季節。

街が水で保湿される。



服を着て外に出た。

ロータリー、古着屋、壁の落書き。

坂道の下に立つ。

雨の舗装道路。

右から左から新緑の枝葉。

無言で代官山の坂を登る。



場所。

人が入り、出て行く所。

僕らは今まで一体、

何人の人を迎え、

何人の人を見送ったろう。

俯瞰で見れば幸せだけど、

近視に見れば後悔ばかりだ。



西郷山の上から街を見渡す。

あいかわらず、

霧みたいな雨が世界を覆っている。

さっきのアルペッジョが耳の奥に残っている。



アルペッジョか・・・。

なるほど。

確かにそんな風にして、

僕らは、

今日も、

1音1音さらけ出されるように、

生きているね。



LINEのメッセージに

「どこに行くの?」

ってあったけど、

そんなの分からないよ。

僕らは遠くから来たし、

きっと、遠くまで行くんだろう。



ふと、

その角を曲がったら。

誰かが [終点] って書かれたプラカードを持っていて、

「お疲れさまです。終点ですよ」

って僕らを迎えてくれるその日まで。