SOFAにしても、チェアにしても、空間にしても、
デザインをする時に共通していつも思い出すことがあります。
小沢健二のファーストアルバムの解説文なんですけど、
「スーパーのカゴに偶然入り込んだ何か」という話です。
つまり(相当昔のことで、ディテールは忘れましたが)、
『誰かが何かの料理をしようと食材を買っている。
決められたレシピに従っていろいろ買いそろえる。
家で料理して食べる。美味しくできた。満足。
でも、違う日に同じ料理を同じレシピ通りに作っても、
前回の味と違う。今日はあんまり美味しくない。
どうして?
・・・・・なぜなら、その日のスーパーのカゴには、
目に見えない何かが、ふと、偶然入り込んだからだ』
というものです。
素材や作りの知識、工業機械の知識、
職人の腕前の事前確認、デザインの歴史や系譜、
マーケットの動向、自己思想、販売員のレベル、
資本の投資と回収の相関係数・・・。
数え上げたらきりがないくらい、
(例えば椅子一脚作るのに) 沢山のレシピが必要です。
でも、そのカゴの中に(ごく稀に・・ですけど)、
「神様の一吹き」が入って、名作が生まれる時が、
確かにあるんです。
もっとも科学で突き詰めればその不思議は、
きっと解明出来るんでしょう。
僕は、経営者兼デザイナーです。
決して芸術家ではありません。
だから、本当は、
すべて理詰めで商品をデザインすべきなのでしょうが、
最後の「何か」を解明してしまおうとは、
やっぱり、思いません・・・というか、思えません。
だから、僕は今日も、
要素でパンパンになったスーパーのカゴを持って、
その何か(MUSE)を待っています。