2015年4月11日土曜日

風の強い日おめでとう


家具業界の会合に来ていた。目の前では東京インテリアの社長が業界の未来について、とある想定を熱く語っている。そこにフランスベッドの社長の合いの手が入り、太陽家具の会長や広島府中、飛騨高山のメーカー連の意見が飛び交う。少子化、異業種および外国資本参入。これからの時代の逆風に合わせて家具業界は変わらなければいけない。

逆風…逆風ね。

僕は窓際の机に座り、それをジッと聞いている。窓の外では春の強風に桜が煽られ、最後の花を散らしている。

風の強い日だ。

僕の携帯に、大阪と名古屋の家具屋の社長からほぼ同時にメールが入った。

地方はひどい状態…消費税アップ後、壊滅的に物が動かない。御社の高付加価値家具について話を聞きたい。

それぞれの社長が偶然にも同時刻、同内容のメールを飛ばしたのか…。

僕は吹き飛ばされる桜の花を見下ろしながらそう思う。

確かに僕は彼らの言うこの時代の嵐に対する処方箋を持っているし、自分の店でそれを実践している。それは20年後のスタンダードとなり得る方法論なのだろう。とは言っても、その効果が実証されるのは、ずっと先の話だし、僕らに努力や運がなかったらまず成功しない。つまり人様に教える段ではないということだ。

そこには奢りも謙虚もない。価値観が超多様化した現代に於いて企業が生き残るというのは、相当過酷な試練なのだ。

「まさに嵐だな」

そう小さく呟いた時、眠たげでほんわかした声が頭をよぎった。

「風の強い日おめでとう」

ハッとして記憶を手繰り寄せる。

くまのプーさんだ。

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この風の強い日にプーは歌を歌いながら、いつもの「考える場所」に行くことにしました。

風が吹くよピューピュー
木が騒ぐよザワザワ
葉っぱが囁くよガサゴソ
だから今日はね〜
風の強い日かもね。
おそらくね!

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壇上での話題が大塚家具の話になっている。ちょっと脇道にそれていませんか?そう思うけど口にはしない。予定調和のこの会の行く先を、僕はただ見守るだけだ。

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野リスのゴーファー登場。

ゴーファー「よおー何を苦しそうな顔をしているんだい!」
プー「考え事をしてたんだ」
ゴーファー「何を考えてたんだい?」
プー「うーん。忘れちゃったよ」
ゴーファー「そうかい。俺だったら早く逃げ出さなきゃって考えるけどなっ」
プー「なぜ?」
ゴーファー「風の日だからさ!」

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結局、うやむやなまま、その会は終わった。会合にいる大企業も中小企業も、誰もが答えを見いだせずにいる。ただわかっているのは、これから大きな嵐が来るという暗鬱とした予感だけだ。

僕は上野駅に向かって歩いている。遥か上空で黒くて大きな大気がゴウゴウと渦巻いている。

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ゴーファーと別れてプーはクスクスと笑った。

プー「だったらみんなに風の強い日おめでとうって言わなきゃ」

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僕は僕にできる役割を思う。大したことはできないかもしれない。でも、自社だけではなく、この家具業界のために少しでもポジティブな行動を示す、そのくらいのことはできるだろう。

家具業界の仕事。もちろんそれは政治活動も含めて、今までも一生懸命頑張ってきたことだ。顔を出す会合は10を優に越えている。だけどどうしてかな。最近は顔は出しても、少しそこから気持ちが遠ざかっていた。僕なんかが押しても引いてもビクともしない蓋の重みに少し疲れていたんだ。

最寄りのカフェで、大阪と名古屋の社長にメールを打った。何かお手伝いできることがあれば、もちろんご相談に乗ります。

みんなに風の強い日おめでとうって言わなきゃ。

僕は携帯を置いたまま、しばらくの間目を閉じていた。