2015年4月28日火曜日

厭世のジャコビアン


1603年。
日本において徳川家康が征夷大将軍に任命され、江戸に幕府を開いたこの年に、遠くイギリスではイングランド・ルネサンスが最盛期を迎えていた。エリザベス1世の死後、英国王位を継承したジェームズ1(在位1603-1635)の治世において盛行した美術様式がジャコビアン様式である。

先行したエリザベス様式を受け継いだ形で発展したジャコビアン様式(ジェームズ=ヤコブ→ジェイコブ)は、神の身もと・・即ち天に向かう垂直的なゴシック様式と古典古代の装飾の混在に特徴を持つ。この様式は、17世紀という希有な時代(大航海時代から後の産業革命に至る人類の大発展の時代)の渦中に生まれた。つまり、急激な人類の進歩に対する、ある種の厭世観が生んだ懐古主義的な様式美、いわばカウンターカルチャーであると言える。(cf : 20C.の月面進出や度重なる戦争を厭世するヒッピー文化など) 

また、ジャコビアン様式の家具は、前時代より引き継がれた重厚なゴシックモチーフに加えて、中世インテリア美術史の中でも珍しい幾何学の紋様が連続で現れるのが特徴である。材は主にオークが用いられ、時折ヨーロピアンウォールナット、チェストナットが使われた。

インテリアブランドAREAの主たるデザインはゴシックパターンからの着想が多いが、このジャコビアンのデザインを表現しているのがRIPE(ライプ)シリーズである。中でもそのエッセンスを色濃く現しているのがSide Board RIPE(写真)であろう。前扉の無垢材のHexagon(六角形)はルビーを現し、鏡の中に浮かぶ宝石と見立ててデザインされている。広島府中市の家具職人により精巧に組み上げられたこのサイドボードは、数百年規模の経年変化に耐え得る剛性を持っている。まさに一族の財産となるべきリビングボードである。

Side board PIPE
W 2130 D 512 H 700
1.210.000(フルサイズ特注可能)
design *Go Noda
製作期間3ヶ月


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